インプラント治療とは?歯科医が基礎から解説

歯を失ってしまった時、どのような治療法があるのか気になりますよね。インプラント治療は、失った歯の機能と見た目を自然に回復できる治療法として注目されています。
インプラントとは、顎の骨に人工歯根(インプラント体)を埋め込み、その上に人工の歯を装着する治療法です。天然歯に近い見た目と機能を取り戻すことができるのが最大の特徴です。
一般的な歯科治療とは異なり、外科的な手術が必要となるため、専門的な知識と技術を持った歯科医師による治療が重要になります。
私も10年以上の臨床経験を通じて、多くの患者さんのインプラント治療に携わってきました。
インプラントは主に3つの部分から構成されています。まず、顎の骨に埋め込む「インプラント体」(人工歯根)があります。
その上に「アバットメント」と呼ばれる連結部を取り付け、最後に人工の歯(上部構造)を装着します。
インプラント体の素材には主にチタンが使用されます。チタンは生体親和性が高く、骨と直接結合する「オッセオインテグレーション」と呼ばれる現象を起こすため、強固に固定されるのです。
インプラント治療の大きなメリット5つ
インプラント治療には、他の歯科治療法と比較して多くのメリットがあります。特に重要な5つのメリットについて詳しく解説します。
まず何より、見た目が自然で美しいことが挙げられます。インプラントは自分の歯のように見え、笑顔に自信を取り戻せるのです。
1. 天然歯のような見た目と機能を実現
インプラントの最大の魅力は、見た目が天然歯とほとんど区別がつかないことです。
特に前歯のインプラントでは、色や形、透明感まで細かく調整できるため、隣接する自分の歯と違和感なく馴染みます。
また、噛む力も天然歯とほぼ同等に回復します。入れ歯では噛む力が天然歯の20〜30%程度に低下するとされていますが、インプラントでは80〜90%以上の咀嚼力を発揮できるのです。
これにより、固い食べ物や粘り気のある食べ物も問題なく食べられるようになります。食事の楽しみを取り戻せることは、患者さんの生活の質を大きく向上させます。
2. 周囲の健康な歯を削る必要がない
ブリッジ治療では、失った歯の両隣の健康な歯を削って支台にする必要があります。しかしインプラントは独立して機能するため、周囲の健康な歯を犠牲にすることなく治療できます。
健康な歯を保存できることは、長期的な口腔健康の維持に大きく貢献します。一度削った歯は元には戻りませんから、できるだけ健康な歯を残すことが理想的です。
3. 顎の骨を健康に保つ
歯を失うと、その部分の顎の骨は徐々に痩せていきます。これは使わなくなった骨が吸収されていく自然な現象です。入れ歯では、この骨吸収を防ぐことができません。
一方、インプラントは人工歯根が骨に埋め込まれることで、咀嚼時の刺激が骨に伝わります。この刺激が骨の健康維持に役立ち、骨吸収を防止するのです。
長期的に見ると、顔の形状維持にも貢献します。骨が痩せると顔がこけて老けて見えることがありますが、インプラントはそれを防ぐ効果も期待できるのです。
4. 安定性と快適性の向上
入れ歯は口の中で動いたり、外れたりする可能性がありますが、インプラントは顎の骨にしっかりと固定されるため、そのような心配がありません。
話すとき、笑うとき、食事をするときなど、日常生活のあらゆる場面で安心して過ごせます。特に入れ歯の違和感や不安に悩まされてきた方には、この安定性は大きな魅力です。
また、入れ歯特有の異物感もなく、まるで自分の歯のような自然な感覚を得られます。これにより、食事や会話を楽しむ余裕が生まれるのです。
5. 長期的な耐久性
適切なケアとメンテナンスを行えば、インプラントは10年以上、場合によっては一生使用できる可能性があります。
研究によると、インプラント治療の10年生存率は95%以上と非常に高いことが報告されています。
入れ歯やブリッジは5〜7年程度で作り直しが必要になることが多いのに比べ、インプラントは長期的に見れば経済的にも優れた選択肢と言えるでしょう。
ただし、長持ちさせるためには定期的なメンテナンスが欠かせません。3ヶ月に一度の定期検診を受けることをお勧めします。
知っておくべきインプラントのデメリット
インプラントには多くのメリットがありますが、同時にいくつかのデメリットも存在します。治療を検討する際は、これらのデメリットもしっかりと理解しておくことが大切です。
治療の選択は、メリットとデメリットを総合的に判断して行うものです。患者さん一人ひとりの状況に合わせた最適な選択ができるよう、正確な情報をお伝えします。
1. 外科手術が必要
インプラント治療では、顎の骨にインプラント体を埋め込む外科手術が必要です。
局所麻酔を使用するため痛みは最小限に抑えられますが、手術に対する不安や恐怖感を持つ方もいらっしゃいます。
また、全身疾患(糖尿病や心臓病など)がある場合や、骨粗しょう症の治療薬(ビスフォスフォネート系薬剤など)を服用している場合は、手術のリスクが高まることがあります。
手術の適応については、事前の詳細な検査と診断が必要です。当院では、CTスキャンなどの精密検査を行い、安全に手術が行えるかを慎重に判断しています。
2. 治療期間が長い
インプラント治療は、一般的に数ヶ月から半年以上の治療期間を要します。
これは、インプラント体を埋入した後、骨と結合するのを待つ「オッセオインテグレーション」の期間が必要だからです。
標準的な治療の流れでは、インプラント体の埋入後、上顎で4〜6ヶ月、下顎で2〜4ヶ月の治癒期間を設けます。
その後、アバットメントの装着、最終的な人工歯の製作・装着と進みます。
すぐに歯を回復したい場合は、この治療期間の長さがデメリットとなることがあります。
ただし、条件が整えば「即時荷重」と呼ばれる、手術当日または数日以内に仮歯を装着する方法も選択肢としてあります。
3. 費用が高額
インプラント治療は保険適用外の自費診療となるため、費用が高額になります。
一般的に1本あたり30〜50万円程度かかり、複数本のインプラントが必要な場合はさらに費用が増加します。
これに対して、保険適用の入れ歯やブリッジは数万円程度で治療可能です。経済的な負担は、治療法を選ぶ上で重要な考慮点となります。
ただし、長期的な視点で見ると、入れ歯やブリッジは5〜7年程度で作り直しが必要になることが多いのに対し、インプラントは適切なケアを行えば20年以上使用できる可能性があります。
4. メンテナンスが必須
インプラントを長持ちさせるためには、日々の丁寧なセルフケアと定期的な専門的メンテナンスが欠かせません。
インプラント周囲炎と呼ばれる炎症が発生すると、最悪の場合インプラントが脱落することもあります。
天然歯と同様に、インプラントも毎日の丁寧な歯磨きが必要です。さらに、3ヶ月に一度の定期検診を受け、専門的なクリーニングを行うことが推奨されます。
このような継続的なケアの必要性は、インプラント治療を選択する際に考慮すべき重要な点です。
5. 全ての人に適応するわけではない
インプラント治療は、顎の骨の量や質、全身の健康状態などによって、適応できない場合があります。
特に、以下のような条件がある方は、インプラント治療が難しい、あるいはリスクが高くなる可能性があります:
- 顎の骨量が不足している
- 重度の歯周病がある
- コントロール不良の糖尿病
- 重度の喫煙習慣
- 特定の骨粗しょう症治療薬の長期服用
- 免疫系に問題がある
ただし、骨量不足の場合は骨造成(骨を増やす手術)を行うことで対応できることもあります。
また、全身疾患も適切にコントロールされていれば治療可能なケースも多いです。
インプラントと他の治療法の比較

歯を失った場合の治療法には、インプラントの他に「入れ歯(義歯)」と「ブリッジ」があります。
それぞれの特徴を比較して、どの治療法が自分に合っているのか検討する材料にしてください。
治療法の選択は、口腔内の状態、全身の健康状態、ライフスタイル、経済的な面など、様々な要素を考慮して行う必要があります。
インプラントvs入れ歯
入れ歯は取り外し可能な人工歯で、保険適用となるため費用が比較的安く、手術も必要ありません。短期間で治療が完了する点もメリットです。
しかし、入れ歯は噛む力が天然歯の20〜30%程度に低下し、装着感や違和感があります。また、顎の骨が徐々に痩せていくため、定期的な調整や作り直しが必要になります。
一方、インプラントは天然歯に近い噛み心地と見た目を実現し、顎の骨も健康に保ちます。固定式なので取り外す手間もなく、違和感も少ないです。
ただし、費用が高額で、外科手術が必要という点がデメリットとなります。
インプラントvsブリッジ
ブリッジは失った歯の両隣の歯を削り、その上に人工歯をかぶせて橋渡しする治療法です。
保険適用の場合もあり、インプラントより費用が抑えられ、手術も不要です。治療期間も比較的短いのがメリットです。
しかし、健康な歯を削る必要があり、支台となる歯に負担がかかります。また、ブリッジ下の清掃が難しく、むし歯や歯周病のリスクが高まる可能性があります。
インプラントは健康な歯を削る必要がなく、一本一本独立して機能するため、周囲の歯への負担がありません。
長期的な耐久性も高いですが、前述のように費用や治療期間の面でデメリットがあります。
年齢や状況による選択の目安
治療法の選択は年齢や状況によっても変わってきます。一般的な目安としては:
- 若年〜中年層:長期的な視点でインプラントが有利なことが多い
- 高齢者:全身状態や骨の状態、治療の負担を考慮して選択
- 複数歯欠損:状況に応じてインプラントと入れ歯の組み合わせも選択肢
- 経済的制約がある場合:保険適用の入れ歯やブリッジを検討
どの治療法を選ぶにしても、定期的なメンテナンスが重要です。特にインプラントは、適切なケアを行うことで長期間使用できる可能性が高まります。
インプラント治療を成功させるポイント
インプラント治療を長期的に成功させるためには、いくつかの重要なポイントがあります。これらを押さえることで、インプラントを長く健康に使い続けることができます。
治療前の準備から治療後のケアまで、一貫した取り組みが大切です。
信頼できる歯科医師の選択
インプラント治療の成功には、経験豊富な歯科医師の選択が何よりも重要です。
インプラント治療は高度な専門性を要する治療であり、歯科医師の技術や経験によって結果が大きく左右されます。
歯科医師を選ぶ際のポイントとしては、インプラント治療の実績や症例数、所属学会や取得している資格などが挙げられます。
また、使用するインプラントシステムの種類や、アフターケアの体制なども重要な確認点です。
当院では、日本口腔インプラント学会や日本歯周病学会、日本インプラント臨床研究会に所属し、常に最新の知識と技術の習得に努めています。
安心して治療を受けていただける環境づくりを心がけています。
徹底した術前検査と診断
成功するインプラント治療には、詳細な術前検査と正確な診断が欠かせません。CTスキャンなどの精密検査を行い、顎の骨の状態や神経・血管の位置を確認します。
また、口腔内の状態だけでなく、全身の健康状態も重要な要素です。糖尿病や骨粗しょう症などの全身疾患、服用中の薬剤、喫煙習慣などを詳しく確認し、治療計画に反映させます。
当院では、これらの検査結果をもとに、患者さん一人ひとりに最適な治療計画を立案し、丁寧な説明を行った上で治療を進めています。
日常的なセルフケア
インプラントを長持ちさせるためには、日々の丁寧なセルフケアが不可欠です。インプラント周囲炎を予防するためには、以下のようなケアが重要です:
- 歯ブラシによる丁寧な清掃(特にインプラントと歯肉の境目)
- デンタルフロスや歯間ブラシによる清掃
- 必要に応じて、水流式洗浄器の使用
- 適切な歯磨き粉の選択(研磨剤の強いものは避ける)
当院では、患者さんの口腔内の状態に合わせた最適なセルフケア方法をご指導しています。正しい方法でケアを続けることが、インプラントの寿命を大きく左右します。
定期的なメンテナンス
セルフケアだけでは取り切れない汚れもあります。そのため、3ヶ月に一度の定期検診と専門的なクリーニングが推奨されます。
定期検診では、インプラント周囲の状態、噛み合わせ、上部構造の緩みなどをチェックし、問題の早期発見・早期対応を行います。
これにより、大きなトラブルを未然に防ぐことができます。
当院では、患者さんの状態に合わせたメンテナンスプログラムをご提案し、長期的なサポート体制を整えています。
まとめ:インプラント治療は適切な選択と継続的なケアが鍵
インプラント治療は、失った歯の機能と見た目を自然に回復できる優れた治療法です。
天然歯のような噛み心地と審美性、周囲の歯を削らない点、顎の骨を健康に保つ効果など、多くのメリットがあります。
一方で、外科手術が必要であること、治療期間が長いこと、費用が高額であることなどのデメリットも存在します。
治療法の選択は、これらのメリット・デメリットを総合的に判断し、自分の状況に最も適したものを選ぶことが大切です。
インプラント治療の成功には、信頼できる歯科医師の選択、徹底した術前検査と診断、そして治療後の継続的なケアが不可欠です。
適切なセルフケアと定期的なメンテナンスを行うことで、インプラントを長期間健康に使い続けることができます。
当院では、患者さん一人ひとりの状況に合わせた最適な治療計画の立案から、治療後の長期的なサポートまで、トータルでのケアを提供しています。
インプラント治療をご検討の方は、まずは気軽にご相談ください。
詳しい情報や無料カウンセリングのご予約は、江田あおば歯科・矯正歯科までお問い合わせください。患者さんの笑顔のために、最善の治療をご提案いたします。
監修医師
江田あおば歯科・矯正歯科 院長:上田 聡太

https://aoba-ku.jp/medical_list/facilities/6474/interview
経歴
サレジオ学院中学校・高等学校 卒業
東京医科歯科大学 歯学部 歯学科 卒業
神奈川県内 医療法人社団 歯科医院に勤務
神奈川県内 医療法人社団 歯科医院にて院長として勤務
江田あおば歯科・矯正歯科 開院
所属団体
日本歯周病学会 認定医
日本口腔インプラント学会
DFC(Dental Future Conference)
日本インプラント臨床研究会
中野予防歯科研修会
日本歯科医師会
神奈川県歯科医師会
横浜市歯科医師会
青葉区歯科医師会