被せ物の素材選びで悩んでいませんか

 

むし歯治療や歯の損傷で被せ物が必要になったとき、「どの素材を選べばいいのか」と迷われる方は少なくありません。

 

銀歯は目立つし、セラミックは高額だと聞くけれど本当に価値があるのか。

金属アレルギーの心配はないのか。そんな疑問を抱えたまま、歯科医院で説明を受けても、

専門用語が多くて理解しきれないこともあるでしょう。

 

被せ物の素材選びは、見た目の美しさだけでなく、耐久性や健康面にも大きく関わる重要な決断です。

一度装着すれば長期間使用するものですから、後悔しない選択をしたいものです。

 

この記事では、歯科医師の視点から、セラミック、金属、プラスチックなど

、さまざまな被せ物素材の特徴とメリット・デメリットを詳しく解説します。

あなたの状況に合った最適な素材選びの参考にしていただければ幸いです。

 

被せ物と詰め物の違いを理解する

 

歯科治療において、「被せ物」と「詰め物」は似ているようで異なる治療法です。

 

詰め物は、比較的小さなむし歯を削った後に、その穴を埋めるために使用されます。

歯の一部分だけを補修する治療法で、専門的には「インレー」と呼ばれています。

むし歯の進行が軽度で、歯の大部分が健康な状態に保たれている場合に適用されることが多いです。

 

一方、被せ物はむし歯が進行して歯を大きく削った場合や、根管治療後など、歯の損傷が大きい場合に使用されます。

歯全体を覆うように装着するもので、「クラウン」とも呼ばれています。

歯の形状や機能を回復させるだけでなく、残った歯質を保護する役割も果たします。

 

つまり、むし歯の進行度合いや歯の損傷の程度によって、詰め物か被せ物かが決まるのです。

 

被せ物が必要になるケース

 

被せ物が必要になる主なケースをご紹介します。

 

まず、むし歯が進行して神経まで達し、根管治療を行った場合です。

神経を取り除いた歯は脆くなるため、強度を保つために被せ物で全体を覆う必要があります。

 

次に、歯が大きく欠けたり割れたりした場合です。

事故や強い衝撃によって歯が損傷した際、詰め物では対応できないほどの損傷であれば、被せ物による修復が選択されます。

 

また、審美的な理由で被せ物を選択するケースもあります。

歯の色や形を改善したい場合、セラミックなどの被せ物を使用することで、自然で美しい見た目を実現できます。

 

保険適用の被せ物素材とその特徴

 

保険診療で使用できる被せ物には、いくつかの選択肢があります。

 

費用を抑えたい方にとって、保険適用の素材は魅力的な選択肢です。

しかし、それぞれの素材には特徴があり、メリットとデメリットを理解した上で選ぶことが大切です。

 

銀歯(金銀パラジウム合金)

 

銀歯は、日本の保険診療で最も一般的に使用されてきた被せ物です。

 

金銀パラジウム合金という金属で作られており、非常に高い強度を持っています。

奥歯など、強い噛む力がかかる部位でも割れたり欠けたりすることがほとんどありません。

 

また、保険適用のため、3割負担で約3,500円程度と費用が抑えられる点も大きなメリットです。

 

しかし、銀歯には見た目が金属色で目立つという審美的な問題があります。

口を開けたときに銀色が見えることを気にされる方も多いでしょう。

 

さらに、金属アレルギーのリスクも無視できません。

金属イオンが唾液に溶け出すことで、アレルギー反応を引き起こす可能性があります。

また、歯茎が黒ずむ「メタルタトゥー」という現象が起こることもあります。

 

臨床の現場では、銀歯を除去したら内部でむし歯が進行していたというケースが非常に多く見られます。

これは、金属が熱で膨張し冷えると収縮する性質があるため、接着剤との間に隙間が生じやすく、

そこからむし歯菌が侵入するためです。

 

CAD/CAM冠

 

CAD/CAM冠は、保険適用の白い被せ物として注目されている素材です。

 

プラスチックとセラミックを混ぜ合わせたハイブリッドセラミックのブロックを、

コンピュータで設計し機械で削り出して作製します。金属を使用しないため、金属アレルギーの心配がなく、見た目も白く自然です。

 

2023年12月の診療報酬改定により、前から6番目の歯(第一大臼歯)への適用条件が緩和され、

さらに2024年6月の改定では、7番目の歯(第二大臼歯)にも条件付きで保険適用が拡大されました。

これにより、より多くの方がCAD/CAM冠の恩恵を受けられるようになっています。

 

ただし、CAD/CAM冠にも弱点があります。セラミックとプラスチックの混合素材であるため、

純粋なセラミックと比べると強度が劣り、割れたり欠けたりするリスクがあります。

 

また、経年劣化による変色や着色も起こりやすいという特徴があります。

さらには、プラーク(歯垢)がつきやすい特性があるため、気をつけて歯磨きを行う必要があります。

 

自費診療のセラミック素材を詳しく解説

 

自費診療のセラミック素材は、審美性と機能性を兼ね備えた高品質な選択肢です。

 

保険適用外のため費用は高額になりますが、長期的な視点で見れば、その価値は十分にあると考えられます。

 

オールセラミック

 

オールセラミックは、金属を一切使用せず、陶器素材のみで作られた被せ物です。

 

最大の特徴は、天然歯に近い透明感とツヤを持ち、色調の再現性が非常に高いことです。

近くで見ても人工物と気づかれないほど美しい仕上がりになります。

 

表面がツルツルしているため汚れが付着しにくく、変色や着色のリスクも低いです。

また、むし歯や歯周病になりにくいというメリットもあります。

 

金属を使用しないため、金属アレルギーの心配がなく、歯茎が黒ずむこともありません。

前歯など、見た目を特に重視したい部位に最適です。

 

ただし、強い衝撃が加わると割れることがあるというデメリットがあります。

そのため、噛み合わせが強い方や奥歯の治療、歯ぎしりや食いしばりの癖がある方には向かない場合があります。

費用は自費診療で約30,000〜50,000円程度です。

 

e.max(イーマックス)

 

e.maxは、ガラスセラミックを強化した素材で、セラミックの中でも最も透明度が高いとされています。

 

色調の再現性に優れており、オールセラミックと同様に表面がツルツルしているため汚れが付着しにくく、変色や着色のリスクが低いです。

オールセラミックよりも耐久性が高いため、審美性と機能性を両立したセラミックといえるでしょう。

 

前歯だけでなく、小臼歯にも使用できる汎用性の高さも魅力です。

ただし、透明感が高いため、土台の色が透けて見えることがあります。

 

金属の土台を使用している場合や、土台の歯に変色がある場合は、審美性が低下する可能性があるので注意が必要です。

 

ジルコニア

 

ジルコニアは「人工ダイヤモンド」とも呼ばれる非常に硬い素材です。

 

金属と同程度の耐久性があるため、負担のかかりやすい奥歯や、歯ぎしり・食いしばりの癖がある方でも使用できます。

他のセラミックと同様に、経年劣化による変色・着色のリスクが低く、むし歯・歯周病のリスクも低いというメリットがあります。

 

近年の研究では、ジルコニアの強化機構を基に、金属に匹敵する高い靭性を発現する高強度ジルコニアの開発も進んでいます。

これにより、高度な信頼性が要求される工具、筐体、生体・医用材料等の広範な分野への利用が期待されています。

 

しかし、硬度が高すぎるため、噛み合う歯が欠けたり割れたりする可能性があるというデメリットがあります。

また、オールセラミックやe.maxと比べると、透明感や色調の再現度がやや劣ります。

 

強度を重視する奥歯の治療や、歯ぎしり・食いしばりの癖がある方に適しています。

 

メタルボンド

 

メタルボンドは、内側が金属で外側にセラミックを盛り付けた被せ物です。

 

金属の強度とセラミックの審美性を兼ね備えています。

金属フレームの上にポーセレンを盛り付けるため、一見すると普通のセラミック歯に見えます。

 

耐久性は銀歯と同程度で、奥歯など強い力がかかる部分にも使用できます。

ただし、金属を使用しているため、金属アレルギーのリスクや、歯茎が黒ずむメタルタトゥーのリスクがあります。

また、e.maxやオールセラミックほど審美性は高くありません。

 

ハイブリッドセラミック

 

ハイブリッドセラミックは、セラミックとレジン(歯科用プラスチック)を混ぜ合わせた素材です。

 

レジンを含むため、他のセラミックよりも費用を抑えられるのが最大のメリットです。

ただし、レジンが混ざっているため、他のセラミックよりも透明感が劣り、色調の再現性も低いというデメリットがあります。

 

また、使い続けるうちに変色・着色したり、歯との間に隙間ができてむし歯になるリスクもあります。

費用を抑えながら白い歯を希望する方や、保険診療で白い歯を希望する方に適しています。

 

金属素材の被せ物の特徴

 

金属素材の被せ物には、銀歯以外にもいくつかの選択肢があります。

 

ゴールドクラウン

 

ゴールドクラウンは、生体親和性の高い貴金属で作られた、保険適用外の被せ物です。

 

金にプラチナを加えた白金加金も含まれます。

金属でありながら歯や歯茎の変色が少なく、金属アレルギーにもなりにくいことが特徴です。

 

歯と同じような硬さにできるため、周囲の歯にも優しいとされています。

適合性が高くむし歯になりにくい、歯や歯茎が変色しにくい、強度が高いというメリットがあります。

 

ただし、銀歯ほどではないものの目立つという審美的な問題があります。費用は自費診療で60,000円前後です。

 

被せ物素材の選び方のポイント

 

被せ物の素材を選ぶ際には、いくつかの重要なポイントを考慮する必要があります。

 

治療部位による選び方

 

治療する歯の位置によって、最適な素材は異なります。

 

前歯など見た目が重要な部位には、透明感と色調の再現性に優れたオールセラミックやe.maxが適しています。

一方、奥歯など強い力がかかる部位には、耐久性の高いジルコニアやメタルボンドが向いています。

 

審美性を重視する場合

 

見た目の美しさを最優先する場合は、オールセラミックやe.maxがおすすめです。

 

これらの素材は天然歯に近い透明感と色調を再現でき、周囲の歯と自然に調和します。

特に前歯や笑ったときに見える部分の治療では、審美性の高い素材を選ぶことで、自信を持って笑顔を見せることができるでしょう。

 

費用を考慮する場合

 

費用を抑えたい場合は、保険適用の銀歯やCAD/CAM冠が選択肢になります。

 

ただし、長期的な視点で考えると、自費診療のセラミックの方がむし歯の再発リスクが低く、

結果的にコストパフォーマンスが良い場合もあります。

 

初期費用だけでなく、耐久性やメンテナンスのしやすさも含めて総合的に判断することが大切です。

 

金属アレルギーへの配慮

 

金属アレルギーの心配がある方は、金属を使用しない素材を選ぶべきです。

 

オールセラミック、e.max、ジルコニア、CAD/CAM冠などは金属を含まないため、アレルギーのリスクがありません。

 

すでに金属アレルギーの症状がある方はもちろん、将来的なリスクを避けたい方にもおすすめです。

 

噛む力の強さや歯ぎしりの有無

 

噛む力が強い方や、歯ぎしり・食いしばりの癖がある方は、強度の高い素材を選ぶ必要があります。

 

ジルコニアやメタルボンド、ゴールドクラウンなどが適しています。

オールセラミックやe.maxは審美性に優れていますが、強い力がかかると割れるリスクがあるため、注意が必要です。

 

被せ物の寿命とメンテナンス

 

被せ物の寿命は、素材や使用状況によって異なります。

 

一般的に、セラミック系の被せ物は適切なメンテナンスを行えば10年以上使用できるとされています。

一方、銀歯やハイブリッドセラミックは、経年劣化やむし歯の再発により、それよりも短い期間で交換が必要になることがあります。

 

被せ物を長持ちさせるコツ

 

被せ物を長持ちさせるためには、日々のケアと定期的な検診が欠かせません。

 

まず、毎日の歯磨きを丁寧に行うことが基本です。

被せ物と歯茎の境目は汚れが溜まりやすいため、特に注意して磨きましょう。

 

歯間ブラシやデンタルフロスを使用して、歯と歯の間の清掃も忘れずに行ってください。

定期的に歯科医院で検診を受けることも重要です。被せ物の状態や噛み合わせをチェックし、問題があれば早期に対処できます。

 

プロフェッショナルクリーニングを受けることで、自分では取り切れない汚れを除去し、

むし歯や歯周病のリスクを減らすことができます。

 

歯ぎしりや食いしばりの癖がある方は、マウスピースの使用を検討しましょう。

就寝時にマウスピースを装着することで、被せ物への過度な負担を軽減できます。

 

被せ物が取れたときの対処法

 

被せ物が取れてしまった場合は、できるだけ早く歯科医院を受診してください。

 

取れた被せ物は大切に保管しておきましょう。状態によっては、再度装着できる場合があります。

自分で接着剤などを使って戻そうとすることは避けてください。

不適切な処置は、さらなるトラブルを引き起こす可能性があります。

 

被せ物が取れた部分では、できるだけ咀嚼を避けるようにしましょう。

露出した歯質は敏感になっており、細菌感染のリスクも高まります。

口内を清潔に保ち、早めに専門家の治療を受けることが大切です。

 

最新のセラミック治療技術

 

セラミック治療の分野では、技術革新が進んでいます。

 

2025年現在、AI技術や3Dプリントの導入により、より精密で個々に最適化された治療が可能となっています。

従来のアナログ手法からコンピューター支援による精密治療への転換が進み、治療精度と効率の両立が実現されています。

 

AIによる精密な設計

 

国内では、AIを活用したクラウン自動設計システムの導入が進んでいます。

 

こうしたAI技術の普及により、補綴物の設計時間が短縮され、品質の向上が期待されています。

患者一人ひとりの口腔内に合わせた最適な補綴治療が実現しつつあります。

 

3Dプリント技術の活用

 

3Dプリント技術を用いることで、従来よりも短時間で高精度なセラミック製品の製作が可能になりました。

 

最新の歯科用3Dプリンターでは、1本のクラウンをわずか1〜2時間程度で出力でき、即日での装着も実現しています。

これにより、患者は複数回の通院を避けられ、治療全体のスピードと快適さが大きく向上しています。

 

まとめ〜あなたに最適な被せ物素材を選ぶために

 

被せ物の素材選びは、審美性、機能性、費用、健康面など、多くの要素を総合的に判断する必要があります。

 

保険適用の銀歯やCAD/CAM冠は費用を抑えられますが、審美性や耐久性には限界があります。

一方、自費診療のセラミック素材は高額ですが、見た目の美しさ、虫歯の再発リスクの低さ、

金属アレルギーの心配がないなど、多くのメリットがあります。

 

治療部位、審美性へのこだわり、予算、金属アレルギーの有無、噛む力の強さなど、

ご自身の状況に合わせて最適な素材を選ぶことが大切です。

 

江田あおば歯科・矯正歯科では、患者様一人ひとりに丁寧なカウンセリングを行い、最適な治療法をご提案しています。

「痛くない、削らない、抜かない治療」を理念とし、皆様の生涯のお口の健康を守れるような治療を提供し続けることをお約束します。

 

被せ物の素材選びでお悩みの方は、ぜひお気軽にご相談ください。

専門的な知識と豊富な経験を持つスタッフが、あなたに最適な治療法をご提案いたします。

詳細はこちら:審美治療、ホワイトニング

 

監修医師

 

江田あおば歯科・矯正歯科 院長:上田 聡太

 

 

https://aoba-ku.jp/medical_list/facilities/6474/interview

 

経歴

サレジオ学院中学校・高等学校 卒業
東京医科歯科大学 歯学部 歯学科 卒業
神奈川県内 医療法人社団 歯科医院に勤務
神奈川県内 医療法人社団 歯科医院にて院長として勤務
江田あおば歯科・矯正歯科 開院

 

所属団体

日本歯周病学会 認定医
日本口腔インプラント学会
DFC(Dental Future Conference)
日本インプラント臨床研究会
中野予防歯科研修会
日本歯科医師会
神奈川県歯科医師会
横浜市歯科医師会
青葉区歯科医師会