歯ぎしりとは?無意識に起こる歯と顎のダメージ

歯ぎしりは、睡眠中や無意識のうちに上下の歯を強くこすり合わせたり、食いしばったりする習慣のことを指します。
医学的には「ブラキシズム」と呼ばれており、多くの方にみられる習慣の一つです。
夜中に「カチカチ」「ギリギリ」と不快な音を立てながら、歯をすり減らし、ダメージを与える歯ぎしり。
ご自身では気づかなくても、パートナーやお子様から「歯ぎしりの音がすごい」と聞いて、
ご自身の歯ぎしりに気づいた方もおられるのではないでしょうか?
日常的に歯ぎしりをしてしまう人は、歯が摩耗したり、歯にくさび状の凹みが現れる他、頭痛や肩こり、
首こりの原因になることもわかっています。
歯ぎしりを何年もし続けると、歯に痛みを覚えたり、補綴(詰め物や被せ物)が必要になったり、
肩や首のこりから手のしびれを覚えたり、慢性的な片頭痛を感じるなど、様々な症状を伴う恐れがあります。
歯ぎしりの種類と特徴
歯ぎしりには、主に3つのタイプがあります。
グラインディングは、上下の歯を強くこすり合わせるタイプの歯ぎしりです。
ギリギリと音を立てることが特徴で、周囲の人が気づきやすいタイプです。
歯の表面がすり減ったり、歯茎に負担がかかったりするリスクがあります。
クレンチングは、歯を強く噛み締めるタイプの歯ぎしりです。
音が出ないため、周囲の人や本人も気づきにくいのが特徴です。
歯や顎関節に強い圧力がかかるため、顎の痛みや頭痛、肩こりなどを引き起こすことがあります。
タッピングは、上下の歯をカチカチと短時間、連続してぶつけ合うタイプの歯ぎしりです。
グラインディングやクレンチングに比べて、頻度は少ないとされています。
歯ぎしりが及ぼす影響
歯ぎしりは矯正治療中の方に限らず、矯正治療をしていない方にとっても、さまざまな問題を引き起こします。
歯のすり減りは、歯ぎしりによって歯の表面を覆うエナメル質という組織がすり減り、内部の象牙質が露出することがあります。
これにより、歯がしみやすくなる知覚過敏や、むし歯になりやすい状態になることがあります。
また、強い力が加わることで歯にひびが入ったり、最悪の場合、歯が割れたりする可能性もあります。
顎や筋肉に負担がかかることも深刻な問題です。歯ぎしりは、顎関節や顎の周囲の筋肉に大きな負担をかけます。
これにより、顎を開け閉めする際に音が鳴ったり、口を開けにくいといった症状を引き起こすことがあります。
また、顎の筋肉が過度に発達し、エラが張ったような顔の輪郭に変化することもあります。
歯ぎしりを引き起こす主な原因
歯ぎしりの原因は一つではありません。
複数の要因が複雑に絡み合っていると考えられています。
歯ぎしりの状態や歯の咬耗などを見ても特定できるものではありません。
歯ぎしりは無意識のうちにしてしまうため、自身では気づいていない人もたくさんいます。
また、近年では睡眠時の歯ぎしりだけではなく、覚醒時でも食いしばったり歯をギリギリしてしまう人もいることがわかってきています。
心理的な要因とストレス
歯ぎしりの原因として、最も一般的なのがストレスです。
日常生活で感じる精神的なストレスや緊張、不安などが、無意識のうちに歯ぎしりとして現れることがあります。
ストレスを感じると、自律神経のバランスが乱れ、交感神経が優位になります。
その結果、睡眠中も体がリラックスできず、歯を強く噛み締めたり、こすり合わせたりすると考えられています。
仕事や人間関係、家庭での悩みなど、心身に負担がかかっていると感じる場合は、ストレスが原因である可能性が高いでしょう。
仕事や家庭の悩み、精神的な緊張など、ストレスが高まると歯ぎしりが起こりやすくなります。
リラックスできる環境やストレス解消法を見つけることが大切です。
噛み合わせの不調和
歯並びが悪く、噛み合わせがずれていることも、歯ぎしりの原因の一つです。
特定の歯に過剰な負担がかかるような噛み合わせは、無意識のうちにその負担を軽減しようとして、
歯ぎしりを引き起こすことがあります。
また、詰め物や被せ物の高さが合っていない場合も、噛み合わせの不調和を招き、歯ぎしりの原因となることがあります。
矯正中の方の場合、歯が動く過程で噛み合わせが変化するため、一時的に歯ぎしりが起こりやすくなることもあります。
睡眠障害と生活習慣の影響
睡眠時無呼吸症候群などの睡眠障害が、歯ぎしりの原因となることがあります。
睡眠の質を向上させることで、歯ぎしりも改善されることが期待できます。
歯ぎしりは、「レム睡眠」と呼ばれる浅い睡眠中や、深い眠りである「ノンレム睡眠」に移行する前後に頻発し、
睡眠の質やサイクルとも密接に関係しています。
睡眠中に交感神経が過剰に働いていると、筋肉の緊張が高まり、噛みしめや歯ぎしりといった行動が無意識に引き起こされるのです。
アルコールの摂取や喫煙も歯ぎしりの原因となることがあります。
アルコールには筋肉をリラックスさせる作用がありますが、過剰に摂取すると、
かえって睡眠中の筋肉の緊張を高め、歯ぎしりを引き起こす可能性があります。
また、タバコに含まれるニコチンは、交感神経を刺激するため、歯ぎしりの頻度を高めることが知られています。
さらに、カフェインの過剰摂取も歯ぎしりを誘発する要因となります。
マウスピースによる歯ぎしり対策

歯科医院で行う歯ぎしり対策の中心となるのが、マウスピース(ナイトガード)の使用です。
マウスピースは、歯ぎしりによる歯や顎への負担を軽減し、歯の摩耗や破損を防ぐ効果があります。
歯科医院で作成するカスタムメイドのマウスピースは、患者様一人ひとりの歯型に合わせて精密に作られるため、
フィット感が良く、長時間の装着でも違和感が少ないのが特徴です。
マウスピースの効果と役割
歯の保護と肩こりの軽減が、マウスピースの主な役割です。
マウスピースは柔軟性のあるプラスチック素材で作られており、歯ぎしりによる過度な圧力や摩擦を吸収します。
これにより、歯の表面を覆うエナメル質の摩耗を防ぎ、歯が割れたり欠けたりするリスクを大幅に低減できます。
また、顎関節への負担も軽減されるため、顎の痛みや頭痛、肩こりなどの症状改善にもつながります。
快適な睡眠へと導く役割も見逃せません。マウスピースを装着することで、歯ぎしりによる不快な音が軽減され、
パートナーの睡眠を妨げることも少なくなります。
また、顎の筋肉の緊張が和らぐことで、より深い睡眠が得られるようになり、朝の目覚めもすっきりすることが期待できます。
カスタムメイドと市販品の違い
マウスピースには、歯科医院で作成するカスタムメイドのものと、薬局などで購入できる市販品があります。
カスタムメイドのマウスピースは、歯科医師が患者様の歯型を精密に採取し、専門の技工所で製作します。
そのため、フィット感が非常に良く、長時間装着しても違和感が少ないのが特徴です。
また、噛み合わせの調整も細かく行えるため、顎関節への負担を最小限に抑えることができます。
耐久性も高く、適切にケアすれば数年間使用できます。
一方、市販のマウスピースは、お湯で温めて自分で成形するタイプが一般的です。
価格は安価ですが、フィット感はカスタムメイドに劣ります。
また、噛み合わせの調整が不十分な場合、かえって顎関節に負担をかけてしまう可能性もあります。
短期間の使用や、歯科医院を受診するまでの応急処置としては有効ですが、
長期的な使用にはカスタムメイドのマウスピースをお勧めします。
マウスピース使用時の注意点
マウスピースを効果的に使用するためには、いくつかの注意点があります。
まず、装着時間を守ることが重要です。基本的には就寝時に装着しますが、
日中の歯ぎしりが気になる方は、歯科医師の指示に従って日中も使用することがあります。
ただし、装着時間が不足すると効果が得られないため、毎日継続して使用することが大切です。
清潔に保つことも欠かせません。使用後は必ず水で洗い、専用のブラシで汚れを落としましょう。
週に1〜2回は、入れ歯洗浄剤などを使って消毒することをお勧めします。
不衛生な状態で使用すると、口腔内の細菌が繁殖し、むし歯や歯周病のリスクが高まります。
定期的なチェックと調整も必要です。マウスピースは使用しているうちに摩耗したり、変形したりすることがあります。
また、歯の治療や歯並びの変化によって、フィット感が悪くなることもあります。
3〜6ヶ月に一度は歯科医院でチェックを受け、必要に応じて調整や作り直しを行いましょう。
生活習慣改善による歯ぎしり対策
マウスピースの使用と並行して、生活習慣を見直すことも歯ぎしり対策には非常に重要です。
歯ぎしりの根本的な原因に働きかけることで、より効果的に症状を改善できます。
日常生活の中で実践できる具体的な対策をご紹介します。
ストレスマネジメントとリラクゼーション
ストレスは歯ぎしりの最大の要因の一つです。
日常的にストレスを軽減する習慣を取り入れることが、歯ぎしり改善の第一歩となります。
深呼吸や瞑想、ヨガなどのリラクゼーション法を取り入れることで、自律神経のバランスを整え、
交感神経の過剰な働きを抑えることができます。
就寝前の30分〜1時間は、リラックスタイムとして確保しましょう。スマートフォンやパソコンの使用を控え、
読書や軽いストレッチ、アロマテラピーなど、心身を落ち着かせる活動を行うことをお勧めします。
温かいお風呂にゆっくり浸かることも、筋肉の緊張をほぐし、質の良い睡眠へと導く効果があります。
睡眠環境の改善
質の良い睡眠は、歯ぎしり予防に直結します。
睡眠環境を整えることで、深い睡眠が得られやすくなり、歯ぎしりの頻度を減らすことができます。
寝室の温度は18〜20度程度、湿度は50〜60%程度が理想的です。
また、遮光カーテンを使用して部屋を暗くし、静かな環境を保つことも重要です。
枕の高さや寝具の硬さも見直してみましょう。首や顎に負担がかかる姿勢で寝ていると、
歯ぎしりが起こりやすくなります。
自分の体型に合った枕を選び、横向きや仰向けなど、リラックスできる寝姿勢を見つけることが大切です。
食生活と嗜好品の見直し
食生活や嗜好品の摂取も、歯ぎしりに影響を与えます。
カフェインやアルコールの過剰摂取は、睡眠の質を低下させ、歯ぎしりを誘発する可能性があります。
特に就寝前3〜4時間は、カフェインを含む飲み物(コーヒー、紅茶、エナジードリンクなど)やアルコールの摂取を控えましょう。
また、硬い食べ物を頻繁に噛むことで、顎の筋肉が過度に発達し、歯ぎしりが起こりやすくなることがあります。
バランスの取れた食事を心がけ、顎に過度な負担をかけないようにしましょう。
ビタミンB群やマグネシウムを含む食品は、神経の働きを整え、ストレス軽減に役立つとされています。
日中の意識的な習慣づくり
日中の無意識な食いしばりや歯ぎしりに気づき、意識的に改善することも重要です。
デスクワークや集中作業をしているとき、無意識に歯を噛み締めていないか、時々チェックしてみましょう。
「上下の歯を離しておくこと」を意識し、舌を上顎に軽く当てる姿勢を保つことで、顎の筋肉の緊張を和らげることができます。
スマートフォンやパソコンの使用時は、姿勢にも注意が必要です。
前かがみの姿勢は首や顎に負担をかけ、歯ぎしりを誘発する可能性があります。
画面を目の高さに合わせ、背筋を伸ばした正しい姿勢を保つよう心がけましょう。
歯科医院での専門的な治療とサポート
歯ぎしりが重症化している場合や、マウスピースと生活習慣改善だけでは十分な効果が得られない場合は、
歯科医院での専門的な治療が必要になることがあります。
噛み合わせの調整と矯正治療
噛み合わせの不調和が歯ぎしりの原因となっている場合は、歯科医師による咬合調整が有効です。
詰め物や被せ物の高さを調整したり、歯の一部を削って噛み合わせを整えたりすることで、
特定の歯にかかる過剰な負担を軽減できます。
また、歯並びが悪い場合は、矯正治療によって根本的に噛み合わせを改善することも検討されます。
ボトックス注射による治療
近年、歯ぎしりや食いしばりの治療として、ボトックス注射が注目されています。
ボトックスは、咬筋(噛むときに使う筋肉)に注射することで、筋肉の過剰な収縮を抑制し、
歯ぎしりや食いしばりの力を弱める効果があります。
効果は3〜6ヶ月程度持続し、定期的に注射を受けることで、継続的な改善が期待できます。
ただし、この治療は保険適用外となることが多く、費用面での検討も必要です。
定期的なメンテナンスとフォローアップ

歯ぎしり対策は、一度行えば終わりというものではありません。
定期的に歯科医院を受診し、歯や顎の状態をチェックしてもらうことが重要です。
マウスピースの状態確認や調整、噛み合わせのチェック、歯の摩耗状況の確認などを行い、必要に応じて治療計画を見直していきます。
3〜6ヶ月に一度の定期検診を習慣づけることをお勧めします。
また、歯ぎしりによって既に歯が摩耗したり、欠けたりしている場合は、
審美歯科治療によって歯の形態を回復することも可能です。セラミックやレジンなどの材料を使用して、
歯の見た目と機能を改善できます。
まとめ〜歯ぎしり対策で健康な口腔環境を
歯ぎしりは、放置すると歯や顎、全身の健康に深刻な影響を及ぼす可能性があります。
しかし、適切な対策を講じることで、症状を改善し、健康な口腔環境を維持することができます。
マウスピースの使用は、歯や顎への負担を軽減する即効性のある対策ですが、それだけでは根本的な解決にはなりません。
ストレスマネジメント、睡眠環境の改善、食生活の見直しなど、生活習慣全体を見直すことが重要です。
江田あおば歯科・矯正歯科では、「痛くない、削らない、抜かない治療」を理念とし、
患者様一人ひとりに丁寧なカウンセリングを行い、生涯のお口の健康を守れるような治療を提供し続けることをお約束します。
歯ぎしりでお悩みの方は、まずはお気軽にご相談ください。
カスタムメイドのマウスピース作成から、噛み合わせの調整、生活習慣のアドバイスまで、総合的なサポートを行います。
東急田園都市線江田駅から徒歩1分という好立地で、土曜日も診療可能です。
24時間ウェブ予約システムも導入しておりますので、ご都合の良い時間にご予約いただけます。
当日や近日中のご予約などお急ぎの方は、お電話にて一度お問い合わせください。
WEB予約枠が空いていない場合でも電話予約であれば、ご予約の調整が可能な場合がございます。
歯ぎしり対策は、早期発見・早期治療が重要です。気になる症状がある方は、ぜひ一度ご来院ください。
詳細はこちら:江田あおば歯科・矯正歯科
監修医師
江田あおば歯科・矯正歯科 院長:上田 聡太

https://aoba-ku.jp/medical_list/facilities/6474/interview
経歴
サレジオ学院中学校・高等学校 卒業
東京医科歯科大学 歯学部 歯学科 卒業
神奈川県内 医療法人社団 歯科医院に勤務
神奈川県内 医療法人社団 歯科医院にて院長として勤務
江田あおば歯科・矯正歯科 開院
所属団体
日本歯周病学会 認定医
日本口腔インプラント学会
DFC(Dental Future Conference)
日本インプラント臨床研究会
中野予防歯科研修会
日本歯科医師会
神奈川県歯科医師会
横浜市歯科医師会
青葉区歯科医師会