口臭が気になる方へ

 

マスク生活が続く中、自分の口臭に気づいた経験はありませんか?

 

朝起きた時の口の中のネバネバ感や、人と話す時にふと気になる息の臭い・・・

実は、これらの症状は単なる「歯磨き不足」や「胃の調子が悪い」だけではなく、

**むし歯や歯周病**が原因となっている可能性が高いのです。

 

日本人の成人の約8割が歯周病またはその予備軍と言われており、誰もがかかりうる身近な病気です。

 

私は江田あおば歯科・矯正歯科で院長を務めており、これまで20年以上にわたり地域の皆様のお口の健康をサポートしてきました。

その経験から、口臭に悩む多くの患者様と向き合ってきましたが、適切な診断と治療により、ほとんどのケースで改善が可能です。

 

この記事では、歯科医の視点から口臭の原因となる虫歯・歯周病のメカニズムと、具体的な対策方法について詳しく解説していきます。

 

口臭の主な原因物質とそのメカニズム

 

口臭には、いくつかの原因物質が関わっています。

最も代表的なのが「**硫化水素**」と「**メチルメルカプタン**」という2つの物質です。

 

硫化水素は卵が腐ったような臭いがする物質で、唾液の量が不足して口腔内が乾燥した時に発生します。

健康な状態でも発生する可能性がありますが、通常は唾液の自浄作用により抑えられています。

 

一方、メチルメルカプタンは野菜や魚が腐ったような臭いがする物質で、**歯周病による口臭の主な原因**となります。

硫化水素よりも臭いが強く、歯周病が進行するほど濃度が高くなっていくという特徴があります。

 

歯周病になると、歯と歯茎の隙間である「歯周ポケット」に細菌が繁殖し、

その細菌が代謝の過程でこれらの悪臭物質を産生するのです。

 

特に嫌気性菌と呼ばれる酸素を嫌う細菌は、歯周ポケットという酸素の少ない環境で活発に活動します。

 

これらの細菌の中でも、P. gingivalis菌(ポルフィロモナス・ジンジバリス)は

強烈な臭いをともなうガスを発生させることが知られており、

 

歯周病治療においてはこの菌の除菌が重要なポイントとなります。口臭測定器を使用することで、

これらの原因物質の量や種類を客観的に分析することができ、より効果的な治療計画を立てることが可能になります。

 

歯周病が口臭を強くする理由

 

歯周病による「膿み」が悪臭の原因に

 

歯周病が原因で発生する口臭には、様々なメカニズムがあります。

 

その代表的な原因が「**膿み**」です。

歯周病によって歯茎が炎症を起こすと、歯根膜という歯茎の奥深くにある組織が破壊されてしまいます。

 

この破壊された組織から膿が発生し、これが強い悪臭のもとになるのです。

膿は細菌と白血球の死骸、組織の破片などが混ざったもので、独特の不快な臭いを放ちます。

 

歯周病が進行すると、歯周ポケットが深くなり、そこに細菌が大量に繁殖します。

 

歯周病菌が産生する悪臭ガス

 

歯周病の原因菌自体も口臭を引き起こします。

特にP. gingivalis菌は、タンパク質を分解する過程で硫化水素やメチルメルカプタンといった揮発性硫黄化合物を大量に産生します。

 

これらの物質は非常に強い臭いを持ち、わずかな量でも周囲の人に不快感を与えるほどです。

歯周ポケット内は酸素が少ない環境であるため、嫌気性菌にとって理想的な繁殖場所となります。

 

ここで細菌が活発に活動することで、継続的に悪臭物質が産生され続けるのです。

また、歯周病が進行すると歯茎からの出血も増え、血液中のタンパク質も細菌の栄養源となり、

さらに悪臭を強めることになります。

 

このような悪循環を断ち切るためには、専門的な歯周病治療による細菌の除去が不可欠です。

 

むし歯が原因となる口臭のメカニズム

むし歯の空洞に蓄積する食べカス

 

むし歯も口臭の大きな原因の一つです。

 

むし歯によって歯に穴が開くと、その空洞部分に食べ物が入り込みやすくなります。

この食べカスは通常の歯磨きでは取り除くことが難しく、口腔内に長時間留まることになります。

口の中は温度が約36℃、湿度がほぼ100%という環境であり、細菌が繁殖するには最適な条件が揃っています。

 

このような環境下で食べカスが放置されると、急速に腐敗が進み、生ゴミやキャベツが腐ったような強烈な臭いを発生させます。

 

特に奥歯のむし歯は自分では気づきにくく、知らないうちに進行していることも少なくありません。

むし歯の窪みが深くなるほど、より多くの食べカスが蓄積し、口臭も強くなっていきます。

 

神経まで達したむし歯による膿の発生

 

むし歯がさらに進行し、歯の中にある神経にまで到達すると、状況はより深刻になります。

 

むし歯菌が神経を侵食すると、神経組織が壊死し、腐敗していきます。

この腐敗した神経組織から膿が発生し、非常に強い悪臭を放つようになります。

 

この段階になると、痛みを感じることもありますが、神経が完全に死んでしまうと痛みがなくなることもあり、

気づかないうちに症状が進行してしまうケースもあります。

 

神経が腐敗した状態を放置すると、歯の根の先端部分に膿の袋ができることがあります。

 

この膿は歯茎を通じて口腔内に排出されることがあり、常に悪臭を発生させ続けます。

また、この状態は単に口臭の問題だけでなく、顎の骨にまで炎症が広がる可能性もあり、早急な治療が必要です。

 

根管治療により感染した神経組織を除去し、適切な処置を行うことで、口臭の改善とともに歯を保存することができます。

 

歯周病・虫歯以外の口臭原因

 

合わない詰め物や被せ物による口臭

 

詰め物や被せ物が合わなくなることも、口臭の原因となります。

 

最初はしっかりと接着していた詰め物(インレー)や被せ物(クラウン)も、経年使用とともに劣化したり、

歯ぎしりやくいしばりなどで歯が揺さぶられることで、歯と修復物との間にすき間が生じることがあります。

 

このすき間に汚れやプラークが溜まると、細菌が繁殖して臭いを放つようになります。

特に空気に直接触れない深い溝にたまる細菌は、嫌気性菌が多く、強い臭いを発生させます。

 

お手入れ不十分な入れ歯・義歯

 

入れ歯や義歯のお手入れが不十分な場合も、口臭の原因となります。

食事が終わってもきちんと手入れをしていない入れ歯は、汚れや細菌の温床になります。

 

臭いが発生するだけでなく、虫歯や歯周病などのトラブルも招きますので、使用後のお手入れは毎日しっかりと行うことが重要です。

 

入れ歯専用の除菌洗浄剤を併用することで、より効果的に清潔を保つことができます。

 

最近では、汚れや臭いが付きにくくなる入れ歯コーティングも利用可能です。

 

タバコやコーヒーによる口臭

 

タバコに含まれるニコチンやタールが臭いの元になるだけでなく、喫煙によって唾液が減り、

口腔内が乾燥することで口臭が強くなる傾向があります。

 

一方、コーヒーは舌の表面に残った微粒子とミルクや砂糖が分解された臭気によって口臭を発生させます。

愛煙家にとって缶コーヒーは休憩時のマストアイテムかもしれませんが、実は口臭発生の悪習慣になっています。

 

ストレスと口呼吸による口臭

 

ストレスによって自律神経が乱れると、唾液の分泌が減少し、ドライマウスになることがあります。

 

口腔内の乾燥は口臭を強くします。

またストレスや過度の疲れにより体に活性酸素が蓄積すると、口臭や体臭が強くなることがあります。

 

口呼吸をしている人は、お口の中が乾燥し、細菌が繁殖しやすくなるので、悪臭が発生しやすくなります。

常に口が開いていると舌が上顎に触れず、舌苔(ぜったい)がつきやすくなり、これも口臭が起こる原因となります。

 

口臭対策グッズ・食生活・歯磨きでの改善可能性

 

口臭対策グッズの効果と限界

 

口臭対策としてマウスウォッシュやデンタルリンスを使う人も一定数います。

しかしこれらはあくまで歯や歯茎の表面にいる雑菌を消毒するためのものです。

 

歯周病やむし歯のリスクを高める歯垢がある状態で使っても、歯垢の中にいる細菌菌はそのまま残ります。

そのため、使ってすぐは口臭が改善したような気がしても、またすぐに元通りになってしまいます。

 

マウスウォッシュに含まれるグルコン酸クロルヘキシジンなどの殺菌成分は、

ムシ歯菌や歯周病菌を破壊し、最大12時間程度細菌の繁殖を抑制する効果があります。

 

ただし、これはあくまで予防的な使用や、専門的な治療と併用することで効果を発揮するものです。

すでに歯周病やむし歯が進行している場合は、根本的な治療が必要不可欠です。

 

食生活改善の役割

 

食生活の改善は、やり方によっては歯周病やむし歯の予防になったり、直接口臭の改善に役立ったりすることがあります。

 

しかし、そもそもの原因である歯周病とむし歯を治療しなければ口臭は出続けるため、どれだけ食生活を変えても状況は変わりません。

 

ニンニクやニラ、ネギ、たくあんなど臭いの強いものを食べた後の口臭は、

一時的なものであり、時間の経過とともに減少していきます。

 

これらの食餌性の口臭は、胃の中で消化された臭いの元になる成分が血液を介して全身に循環し、

肺を経由して吐き出されるものです。

 

正しい歯磨きの重要性と限界

 

正しい歯磨きは、歯周病や虫歯の予防に非常に効果的です。

 

歯周病やむし歯が進行する人は、歯ブラシやデンタルフロスを使用する習慣がない場合が多いので、

正しい歯磨きを身につけることは、お口の健康にとっては大きな前進です。

 

ですが、すでに歯周病やむし歯になっている場合、どれだけ歯磨きを頑張っても、

それだけでは完治させたり、症状を改善させたりすることはできません。

 

そのため、これらが原因の口臭もやはり改善できないのです。

 

歯垢を染め出して磨き残しをチェックしたり、舌の表面が白色、茶褐色または黒色になっていないか確認することは有効です。

ていねいな歯みがきとともに、1週間に1回程度、舌を専用ブラシ(タンクリーナー)などでお手入れすると、さらに効果的です。

 

ただし、すでに進行した歯周病や虫歯がある場合は、専門的な治療が必要となります。

 

歯周病・虫歯による口臭を放置した場合のリスク

 

歯の方が弱い場合の進行

 

歯の方が弱い場合、歯の間や窪みなど、磨き残しが多い部分から歯が溶けてしまい、むし歯を発症します。

 

溶けて窪んだ部分はさらに磨きにくくなるため、磨き残しがどんどん蓄積していきます。

食べカスなどが36℃、湿度100%のお口の中に何日も放置されていると考えるだけでも、

どんな口臭がするのか想像がつくのではないでしょうか。しかも磨き残しが蓄積するほどむし歯は進行します。

 

歯の中にある神経にまで到達すると、その神経をも蝕み、腐らせていきます。

 

結果、患部から出る膿が生ゴミやキャベツが腐ったような臭いを発生させ、かなりきつい口臭を放つようになるのです。

この段階になると、単なる口臭の問題だけでなく、歯を失うリスクも高まります。

 

早期に治療を開始すれば、歯を保存できる可能性が高いため、気になる症状があれば速やかに歯科医院を受診することが重要です。

 

歯周組織の方が弱い場合の進行

 

歯周組織の方が弱い場合は、歯を支える歯茎や骨の方が炎症を起こし、歯周病(歯肉炎、歯槽膿漏)を発症します。

 

症状が進行すると、骨や歯茎が痩せてしまい、骨と歯周組織の間に隙間(歯周ポケット)ができ、歯周病菌が繁殖していきます。

歯周病菌のほとんどは嫌気性菌といって、酸素を好みません。

 

歯周病が進行し、歯周ポケットが深くなると、酸素の届かない環境が広がり、細菌がさらに繁殖しやすくなります。

歯周病は「日本人が歯を失う原因の第1位」と言われており、放置すると最終的には歯が抜け落ちてしまいます。

 

また、歯周病菌は口腔内だけでなく、血流に乗って全身に広がり、

心疾患や糖尿病などの全身疾患のリスクを高めることも知られています。

 

口臭が気になる段階で早期に治療を開始することで、これらの深刻な合併症を予防することができます。

 

口臭外来での口臭分析と歯周病のセルフチェック

 

口臭外来での専門的な口臭分析

 

口臭が気になる場合、口臭外来での専門的な分析を受けることができます。

 

専用の口臭測定器を使用することで、口臭の原因物質の量や種類を客観的に分析できます。

硫化水素やメチルメルカプタンなどの揮発性硫黄化合物の濃度を測定することで、口臭の程度や原因を特定することが可能です。

 

この測定結果に基づいて、より効果的な治療計画を立てることができます。

口臭の原因が口腔内にあるのか、それとも全身疾患に関連しているのかを判断することも重要です。

 

口臭の原因の90%以上は口の中にあると言われていますが、

呼吸器系、消化器系、糖尿病などの全身疾患が原因となることもあります。

 

例えば、糖尿病ではアセトン臭、肝硬変や肝臓癌ではアンモニア臭がすることがあります。

口臭外来では、これらの可能性も含めて総合的に診断を行います。

 

自宅でできる歯周病のセルフチェック

 

歯周病の早期発見のために、自宅でできるセルフチェックも有効です。

 

以下の症状に当てはまる項目がある場合は、歯周病の可能性があります。

**歯ぐきからよく出血する**、**歯ぐきがよく腫れる**、**口の中がネバネバする**、

**グラグラした歯がある**、**歯と歯の間に食べ物がよくはさまる**といった症状は、歯周病の典型的なサインです。

 

また、**穴のあいた歯がある**場合はむし歯が進行している可能性があり、

**歯の表面を舌でさわるとザラザラしている**場合は歯垢や歯石が蓄積しています。

 

**義歯、ブリッジ、冠などが入っている**場合は、その周囲に汚れが溜まりやすく注意が必要です。

**舌を磨いたことがない**という方は、舌苔が蓄積している可能性があります。

 

**口の中がパサパサしている**場合は、唾液分泌が減少している口腔乾燥症(ドライマウス)の可能性があります。

これらの症状がある場合は、早めに歯科医院で診察を受けることをおすすめします。

 

江田あおば歯科・矯正歯科での口臭治療アプローチ

 

当院では「痛くない、削らない、抜かない治療」を理念としています。

 

口臭治療においても、この理念に基づき、患者様一人ひとりに丁寧なカウンセリングを行い、

口臭の原因を特定した上で、最適な治療計画を立てています。

 

歯周病が原因の場合は、歯周ポケットの深さを測定し、歯石除去やスケーリング、

ルートプレーニングなどの専門的な歯周病治療を行います。

 

むし歯が原因の場合は、できるだけ歯を削らずに済む方法を検討し、

必要に応じて根管治療や修復治療を行います。

 

当院は東急田園都市線江田駅から徒歩1分という好立地にあり、土曜日も診療可能です。

駐車場も4台完備しており、通院しやすい環境を整えています。

 

半個室の診療環境により、プライバシーを重視した治療を受けていただけます。

予防中心の診療システムを採用しており、「悪化してから歯医者に通うのではなく悪化しないために通う習慣」を推奨しています。

 

口臭が気になる方、歯周病やむし歯の症状がある方は、お気軽にご相談ください。

 

まとめ

 

口臭の原因の多くは、むし歯や歯周病といった口腔内の問題に起因しています。

 

歯周病では歯周ポケットに繁殖した細菌が硫化水素やメチルメルカプタンといった悪臭物質を産生し、

炎症による膿も強い臭いの原因となります。

 

虫歯では、歯の空洞に蓄積した食べカスの腐敗や、神経が壊死した際に発生する膿が生ゴミのような臭いを放ちます。

これらの症状を放置すると、口臭がさらに悪化するだけでなく、最終的には歯を失うリスクも高まります。

 

マウスウォッシュや歯磨きなどのセルフケアは予防には有効ですが、

すでに進行した歯周病や虫歯による口臭を根本的に改善することはできません。

 

専門的な歯科治療により、原因となる細菌を除去し、炎症を治療することが不可欠です。

口臭が気になる方、歯茎からの出血や腫れ、歯のぐらつきなどの症状がある方は、

早めに歯科医院での診察を受けることをおすすめします。

 

早期発見・早期治療により、口臭の改善だけでなく、歯を長く健康に保つことができます。

江田あおば歯科・矯正歯科では、皆様の生涯のお口の健康を守れるような治療を提供し続けることをお約束します。

口臭や歯周病、むし歯でお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。

詳細はこちら:審美治療、ホワイトニング

 

監修医師

 

江田あおば歯科・矯正歯科 院長:上田 聡太

 

 

https://aoba-ku.jp/medical_list/facilities/6474/interview

 

経歴

サレジオ学院中学校・高等学校 卒業
東京医科歯科大学 歯学部 歯学科 卒業
神奈川県内 医療法人社団 歯科医院に勤務
神奈川県内 医療法人社団 歯科医院にて院長として勤務
江田あおば歯科・矯正歯科 開院

 

所属団体

日本歯周病学会 認定医
日本口腔インプラント学会
DFC(Dental Future Conference)
日本インプラント臨床研究会
中野予防歯科研修会
日本歯科医師会
神奈川県歯科医師会
横浜市歯科医師会
青葉区歯科医師会