歯の構造と痛みのメカニズム

 

歯の痛みを理解するためには、まず歯の構造を知ることが重要です。

歯は、外側から順に「エナメル質」「象牙質」「歯髄」という3つの層で構成されています。

私たちが普段目にしている白い部分は、エナメル質と呼ばれる非常に硬い組織です。

カルシウムやリン酸などからできたハイドロキシアパタイトという結晶でできており、

少しくらい傷ついても唾液の力で元に戻ることができます。これを「再石灰化」と呼びます。

エナメル質には神経がないため、この部分だけが刺激を受けても痛みを感じることはありません。

 

しかし、エナメル質の内側にある象牙質は、エナメル質よりも柔らかく傷つきやすい組織です。

象牙質には「象牙細管」と呼ばれる歯の神経につながる無数の穴があいているため、

象牙質が露出すると、外部からの刺激が神経に伝わりやすくなります。

 

そして、歯の中心部には「歯髄」と呼ばれる神経と血管が通っています。

損傷がこの歯髄にまで及ぶと、耐え難いほどの痛みを生じることになります。

このとき、損傷を受けた組織は炎症を起こし、痛みや熱、腫れなどの症状があらわれます。

細胞からはプロスタグランジンという物質が作られ、痛みを強める一因となっています。

 

つまり、歯の痛みは、何らかの原因でエナメル質が傷つき、象牙質が露出したり、

さらに内側の歯髄にまで影響が及んだりすることで発生するのです。

 

むし歯による痛み

 

 

 

 

むし歯とは何か

 

むし歯とは、口の中の細菌が出す酸によって歯が溶かされた状態のことをいいます。

口の中にはたくさんの種類の細菌が住んでいますが、

その中でもミュータンス菌と呼ばれる菌がむし歯の原因菌として知られています。

ミュータンス菌は、口の中に残った砂糖をはじめとする糖分を栄養分として歯の表面にくっつき、

そこで増殖して歯垢(プラーク)を形成します。

 

また、この細菌は糖分から同時に乳酸を作り出します。

そのためプラークの内部は酸性となり、ゆっくりと歯の表面のエナメル質を溶かしていきます。

これを「脱灰」と呼びます。

歯に穴が開いてしまうと、いわゆる「むし歯」の状態になります。

 

 

むし歯の症状

 

むし歯の特徴的な症状は以下の通りです。

 

  • 熱いものや冷たいものを口にふくむと歯がしみる
  • 痛みが持続する
  • 叩くと響くような鋭い痛み
  • 歯に茶色~黒色のシミがある

 

そのまま放置しておくと、やがて酸に弱い象牙質も壊れていき、歯髄の神経や血液にまで細菌が侵入します。

これを「歯髄炎」と呼びます。

こうなると耐え難いほどの痛みが出たり、ひどい場合には歯の根っこが化膿して全身に悪影響が出ることもあります。

ごく初期のむし歯ならば再石灰化によって自然修復することも可能ですが、

歯髄炎まで進行すると抜髄という治療によって歯髄を取り除くしかない場合が多いのが現実です。

 

 

むし歯になりやすい時期

 

生えたばかりの永久歯はエナメル質が未成熟なため、生えてから2~4年後の間が最もむし歯にかかりやすいといわれます。

また、40歳以上の日本人のおよそ8割が歯周病にかかっているともいわれており、

歯周病によって歯茎が下がると、歯の根元部分が露出してむし歯になりやすくなります。

 

 

 

歯周病による痛み

 

 

歯周病とは

 

歯周病は、歯を支える歯ぐきや骨(歯槽骨)などの組織が破壊される炎症性疾患の総称です。

歯周病は、歯ぐきのみに炎症が起こっている「歯肉炎」と、炎症が進行して歯槽骨に及ぶ「歯周炎」に大別されます。

歯周病の原因は、主に歯に付着したプラーク中の細菌(歯周病菌)です。

プラークを放置しておくと隣接した歯ぐきに炎症が起き、歯と歯ぐきの間に数mmの隙間(歯周ポケット)ができます。

 

 

歯周病の症状

 

歯周病の特徴的な症状は以下の通りです。

 

  • 歯茎が赤く腫れる
  • 歯磨きの際に出血する
  • 口臭がする
  • 歯茎が下がってきた
  • 歯がグラグラする

 

歯周病は時間をかけて徐々に進行していくため、「サイレントキラー(静かな殺し屋)」と呼ばれています。

初期段階では自覚症状がほとんどないため、気づいたときにはかなり進行していることも少なくありません。

症状がひどくなると、歯茎が退縮して象牙質が露出し、知覚過敏やむし歯のリスクが高まります。

 

 

知覚過敏による痛み

 

 

 

知覚過敏とは

 

知覚過敏の正式名称は「象牙質知覚過敏症」です。

何らかの原因によってエナメル質が傷ついて象牙質が露出してしまい、

外部からの刺激が内側の神経に伝わりやすくなって、痛みを感じる疾患です。

冷たいものや酸っぱいものを食べたり飲んだりしたときや、歯ブラシの毛先が歯に触れたとき、風が歯に当たったときなどの刺激で、ズキっとした一過性の痛みを感じることがあります。

とくに、むし歯などの形跡が見当たらないのに、歯の知覚が過敏になっている場合にみられる症状です。

 

 

知覚過敏の原因

 

知覚過敏は、歯周病や加齢、不適切なブラッシング、歯ぎしり・食いしばりなどが原因で歯茎が退縮してしまい、

歯の根の部分である象牙質が露出することで起こります。

健康な歯茎であれば、歯の根の部分は歯茎に覆われて刺激から守られています。

しかし、歯周病などで歯茎が退縮すると象牙質が露出しますので、

冷たいものなどの刺激が神経に伝わりズキっとした痛みを感じてしまいます。

 

また、歯をみがく力が強すぎると歯ブラシの毛先が開き、動きが止まってしまうため、プラーク(歯垢)が落ちにくくなります。

さらに、強いブラッシングによってエナメル質が削れてしまうこともあります。

 

 

知覚過敏の症状

 

知覚過敏の特徴的な症状は以下の通りです。

 

  • 冷たいものや温かいものがしみる
  • 歯磨きをするとしみる
  • 甘いものがしみる
  • たたいても痛みはない
  • 痛みは一時的
  • 歯の表面はきれい
  • 歯の根元が露出している

 

知覚過敏の痛みは一時的に感じる痛みなので、刺激が無くなると痛みも感じなくなります。

 

 

知覚過敏とむし歯の見分け方

 

知覚過敏で感じる痛みとむし歯の痛みはとても似ているため、この2つを見極めるのは少し難しいかもしれません。

知覚過敏と虫歯は、両方とも温度刺激や甘いものを食べたときに、刺激に敏感になりますが、

それぞれ痛みの感じ方など異なる部分もあります。

 

知覚過敏の特徴

  • 痛みの感じ方は一過性
  • 打診痛(歯を叩いたときの痛み)は無い
  • 前歯や小臼歯のあたりが好発部位(病変が起こりやすい部位)

 

むし歯の特徴

  • 細菌感染が原因で引き起こされる
  • 慢性的に続けて痛みを感じる
  • 打診痛がある(歯を叩くと響くような痛みを感じる)
  • 特定の部位はない

 

知覚過敏の場合、冷たいものや歯ブラシの刺激などを受けたときに、

一時的に神経に刺激が伝わり「ズキっとした痛み」や「キーンとしみる感じ」がありますが、刺激がなくなれば痛みもなくなります。前歯や小臼歯のあたりによくみられる症状で、歯を叩いたときに響くような痛みが無いのが特徴です。

一方、むし歯は、細菌の感染が原因で引き起こされます。

初期の段階では、冷たいものや甘いものなどがしみたりしますが、

症状が進行すると慢性的にズキズキとした痛みや歯を叩くと響くような痛みを感じるようになります。

 

 

歯の亀裂による痛み

 

転んだりぶつけたりといった外傷、あるいは歯ぎしりなどが原因となって歯が割れると、

割れ目から細菌が入り込み痛みや炎症を引き起こすことがあります。

「硬いものを噛むと痛みが走る」などの症状が出ます。

歯根が割れた場合、抜歯しなくてはならないケースもあります。

亀裂が小さい場合はレントゲンでも判別が難しく、知覚過敏と判断されてしまうこともあります。

 

 

歯ぎしり・食いしばりの影響

 

歯ぎしり・食いしばりは、知覚過敏を引き起こす大きな要素です。

この癖が日常的にあると、歯に強い力がかかり歯の表面のエナメル質に大きな負担が加わることで、

エナメル質に傷がついたり亀裂が入ったりする場合もあります。

また、歯に不適切な力がかかると、象牙質が露出し「くさび状欠損」を起こしてしまうことがあります。

くさび状欠損は、おもに犬歯の唇側面や小臼歯の頬側面によく見られる症状です。

歯ぎしりや食いしばり、強いブラッシングが原因で引き起こされます。

象牙質が露出することで外からの刺激が加わると、神経に刺激が伝わり痛みを感じるようになります。

歯ぎしりや食いしばりは、無意識に行われていることが多いため、なかなか自分では気づきにくいかもしれません。

 

次のような症状がある方は、知らず知らずのうちに歯ぎしりや食いしばりをしている可能性があります。

  • 被せ物の歯や詰め物が取れやすい
  • 頬の内側に白い線のようなものがある
  • 歯が割れたことがある
  • 朝起きたときに顎がだるく痛みを感じる
  • 歯周病が治りにくい
  • 肩こり、頭痛がある

 

 

噛み合わせの問題による痛み

 

噛み合わせが悪いと、特定の歯に過度な負担がかかり、痛みを引き起こすことがあります。

また、詰め物や被せ物の高さが合っていない場合も、噛み合わせのバランスが崩れ、痛みの原因となることがあります。

噛み合わせの問題は、歯だけでなく、顎関節や周囲の筋肉にも影響を及ぼし、

頭痛や肩こりなどの症状を引き起こすこともあります。

 

 

その他の原因による痛み

 

 

歯以外に原因がある痛み(非歯原性歯痛)

 

歯の痛みの原因として多いのは、むし歯や歯周病をはじめとする歯科疾患ですが、

歯以外に原因があることもあり、その場合は治療法も大きく異なってくるために注意が必要です。

例えば、副鼻腔炎(蓄膿症)や三叉神経痛、心臓疾患などが原因で、歯が痛むように感じることがあります。

これらは「非歯原性歯痛」と呼ばれ、歯科治療では改善しないため、適切な診断が重要です。

 

 

酸蝕歯による痛み

 

エナメル質はpH5.5以下で溶け始めます。

酸性の飲食物を口にすると、口の中は一時的に酸性になります。

通常であれば唾液の力で中和されますが、炭酸飲料や酸っぱい食べ物を長時間かけて飲食するような習慣、

あるいは酸性の飲み物を就寝前に飲んで口の中を酸性状態のまま維持するような習慣があると、歯の表面は簡単に溶けてしまい、

象牙質の一部が露出します。

このような状態の歯を「酸蝕歯」といいます。

酸蝕歯になると、象牙質が露出することで知覚過敏の症状が現れることがあります。

 

 

痛みのタイプ別の対処法

 

 

 

むし歯の場合

 

むし歯が疑われる場合は、できるだけ早く歯科医院を受診することが大切です。

初期のむし歯であれば、削らずに再石灰化を促す治療や、フッ素塗布などで対応できる場合もあります。

しかし、進行してしまうと、削って詰める治療や、神経を取る治療が必要になります。

 

 

歯周病の場合

 

歯周病の治療は、プラークや歯石の除去が基本です。

歯科医院での専門的なクリーニング(スケーリング・ルートプレーニング)を受けるとともに、

毎日の適切なブラッシングが欠かせません。

進行した歯周病の場合は、外科的な治療が必要になることもあります。

 

 

知覚過敏の場合

 

 

知覚過敏の治療方法は、症状の程度によって異なります。

 

  1. 歯磨き粉の使用

知覚過敏専用の歯磨き粉には硝酸カリウムが含まれており、露出した象牙質をカバーして刺激を伝わりにくくする効果があります。

毎日の歯磨きの際にこの歯磨き粉を使用することで、症状の緩和が期待できます。

  1. 薬剤・コーティング剤の塗布

家庭でのケアだけでは改善が見られない場合、歯科医院で直接象牙質にコーティング剤を塗布することも一つの方法です。

  1. 詰め物の施術

歯磨き粉や薬剤の塗布でも症状が改善しなかったり、歯が大きく削れてしまったりしている場合は、

コンポジットレジンを使った詰め物で修復することもあります。

  1. 神経をとる治療

1~3の治療方法で症状が改善されない場合や、日常生活に支障をきたすほどの痛みがある場合は、神経を抜くという選択肢もあります。神経を抜けば痛みやしみる感じはなくなりますが、歯が脆くなる、変色するなどのデメリットもあります。

 

 

歯の亀裂の場合

 

歯の亀裂が小さい場合は、コンポジットレジンで修復できることもありますが、

大きな亀裂や歯根の破折の場合は、抜歯が必要になることもあります。

歯ぎしりや食いしばりが原因の場合は、マウスピースを使用して歯を保護することが推奨されます。

 

 

受診の目安とセルフケア

 

こんな症状があったらすぐに受診を

 

以下のような症状がある場合は、できるだけ早く歯科医院を受診してください。

 

  • 痛みが持続する、または徐々に強くなる
  • 歯を叩くと響くような痛みがある
  • 歯茎が腫れている、または出血がある
  • 歯がグラグラする
  • 口臭が気になる
  • 熱いものや冷たいものがしみる症状が続く

 

これらの症状は、むし歯や歯周病が進行している可能性があります。

 

 

日常的なセルフケア

 

歯の痛みを予防するためには、日常的なセルフケアが欠かせません。

 

適切なブラッシング

  • 毛先を歯にきちんと当ててみがく
  • 軽い力でみがく
  • 歯ブラシは小刻みに動かす
  • やわらかめの毛の歯ブラシを使う

 

知覚過敏のケア

  • 歯がしみる時には、冷たい水ですすがず、ぬるま湯などを使う
  • 知覚過敏ケアハミガキ(歯磨き粉)を使う

 

食生活の見直し

  • 酸性の飲食物を長時間かけて摂取しない
  • 糖分の多い食べ物や飲み物を控える
  • 食後は口をすすぐ、または歯を磨く

 

定期的な歯科検診

悪化してから歯医者に通うのではなく、悪化しないために通う習慣を作りましょう。

定期的な歯科検診を受けることで、むし歯や歯周病の早期発見・早期治療が可能になります。

 

 

まとめ

 

歯の痛みには、むし歯、歯周病、知覚過敏、歯の亀裂、噛み合わせの問題など、さまざまな原因があります。

痛みの種類や場所によって原因が異なるため、適切な対処をするためには、

まずその痛みが何を意味しているのかを理解することが大切です。

一時的な痛みであっても、放置すると症状が悪化し、治療が困難になることもあります。

少しでも気になる症状があれば、早めに歯科医院を受診し、専門的な診断を受けるようにしましょう。

 

当院では、「痛くない、削らない、抜かない治療」を徹底し、予防中心の診療システムを採用しています。

日本歯周病学会認定医が在籍しており、科学的根拠に基づいた歯周治療を提供しています。

1人ひとり丁寧にカウンセリングを行い、皆様の生涯のお口の健康を守れるような治療を提供し続けることをお約束します。

お口の中で気になることがあれば、どうぞお気軽にご相談ください。

 

江田あおば歯科・矯正歯科 審美治療では、皆様のお口の健康を守るため、

充実した医療設備と衛生環境を整えてお待ちしております。

 

監修医師

 

江田あおば歯科・矯正歯科 院長:上田 聡太

 

 

https://aoba-ku.jp/medical_list/facilities/6474/interview

 

経歴

サレジオ学院中学校・高等学校 卒業
東京医科歯科大学 歯学部 歯学科 卒業
神奈川県内 医療法人社団 歯科医院に勤務
神奈川県内 医療法人社団 歯科医院にて院長として勤務
江田あおば歯科・矯正歯科 開院

 

所属団体

日本歯周病学会 認定医
日本口腔インプラント学会
DFC(Dental Future Conference)
日本インプラント臨床研究会
中野予防歯科研修会
日本歯科医師会
神奈川県歯科医師会
横浜市歯科医師会
青葉区歯科医師会